法人向けOffice 365ライセンス契約の基本知識
法人でMicrosoft Officeを導入する際、多くの企業担当者が頭を悩ませるのがライセンス契約の選択です。特に2025年現在、Microsoft 365(旧Office 365)のライセンス体系は複雑化しており、自社に最適なプランを見極めるのは簡単ではありません。
Office 365は、WordやExcel、PowerPointといった定番アプリケーションに加え、クラウドサービスやコミュニケーションツールを包括的に提供するサブスクリプション型のサービスです。法人契約では、ユーザー数や必要な機能に応じて様々なプランが用意されています。
「うちの会社に最適なプランはどれだろう?」「サブスクリプション型と買い切り型、どちらがコスト効率が良いのか」といった疑問を持つ担当者は少なくありません。本記事では、2025年最新の法人向けOffice 365ライセンス契約について、選び方のポイントから導入後の管理まで、実務担当者の視点で詳しく解説します。
サブスクリプション型と買い切り型の違いを理解する
Office製品を導入する際、最初に理解しておきたいのが「サブスクリプション型」と「買い切り型」の違いです。
サブスクリプション型の「Microsoft 365」は、月額または年額で利用料を支払い、契約期間中はサービスを利用できるモデルです。常に最新バージョンが利用でき、アップデートも自動で行われるため、新機能をすぐに活用できます。
一方、買い切り型の「Office 2024」などは、一度購入すれば永続的に使用できるライセンスです。追加費用なしで長期間使用できる反面、新バージョンが出た場合は別途購入が必要になります。
法人利用の場合、どちらを選ぶべきなのでしょうか?
サブスクリプション型のMicrosoft 365は、1ユーザーあたりPC5台・タブレット5台・スマートフォン5台の合計15デバイスまでインストールできます。対して買い切り型のOffice 2024は、1ライセンスにつきPC2台までの利用に制限されています。
また、ライセンス管理の観点では、サブスクリプション型は管理者ポータルから一元管理できるため、大規模な導入や頻繁な人事異動がある企業には便利です。買い切り型は端末ごとの管理となるため、小規模で安定した環境には適しています。
私がITコンサルタントとして多くの企業を支援してきた経験から言えば、2025年の時点では、多くの法人にとってサブスクリプション型のMicrosoft 365が総合的にメリットが大きいと言えるでしょう。
法人向けMicrosoft 365の主要プラン比較
法人向けMicrosoft 365には、主に「Businessプラン」と「Enterpriseプラン」の2種類があります。中小企業向けのBusinessプランは300ユーザーまで、大企業向けのEnterpriseプランはユーザー数無制限で利用できます。
Businessプランの特徴と料金
Businessプランには、主に以下の4つのプランがあります。
- Microsoft 365 Business Basic:クラウドサービスが中心で、Web版・モバイル版のOfficeアプリが利用可能
- Microsoft 365 Business Standard:デスクトップ版Officeアプリに加え、クラウドサービスも利用可能
- Microsoft 365 Business Premium:Standardにセキュリティとデバイス管理機能を追加
- Microsoft 365 Apps for business:デスクトップ版Officeアプリのみ利用可能
料金面では、Business Basicが最も安価で、月額約¥540/ユーザー、Business Standardが月額約¥1,360/ユーザー、Business Premiumが月額約¥2,180/ユーザー、Apps for businessが月額約¥900/ユーザーとなっています(2025年9月現在、年間契約の場合)。
Enterpriseプランの特徴と料金
大企業向けのEnterpriseプランは、より高度なセキュリティ機能やコンプライアンス機能を備えています。主なプランは以下の3つです。
- Microsoft 365 F3:フロントライン従業員向けの限定機能プラン
- Microsoft 365 E3:包括的な機能を備えた標準プラン
- Microsoft 365 E5:高度なセキュリティ・分析・音声機能を含む最上位プラン
料金は、F3が月額約¥1,090/ユーザー、E3が月額約¥3,820/ユーザー、E5が月額約¥5,990/ユーザーとなっています(2025年9月現在、年間契約の場合)。
ユーザー数が多い企業では、これらの月額費用は大きな予算となりますが、買い切り型のOfficeと比較すると、5年程度の長期的な視点では、機能面・運用面でのメリットを考慮すると、コスト効率が良いケースが多いです。
永続ライセンス(買い切り型)の選択肢
サブスクリプション型が主流となっている現在でも、一部の企業にとっては永続ライセンス(買い切り型)のOfficeが適している場合があります。
2025年9月現在、法人向けの永続ライセンスとしては「Office LTSC 2021」が提供されています。LTSCとは「Long Term Servicing Channel」の略で、長期サポートを前提としたバージョンです。
永続ライセンスが適している企業は、以下のような特徴を持つ場合です。
- インターネット接続が限られた環境で作業する必要がある
- ソフトウェアの頻繁な更新を必要としない
- 初期投資は大きくても、長期的なランニングコストを抑えたい
- 特定のバージョンでの安定運用を重視している
永続ライセンスの価格は、Office LTSC Professional Plus 2021が1ライセンスあたり約¥60,000〜、Office LTSC Standard 2021が約¥40,000〜となっています。
ただし、永続ライセンスにはいくつかの注意点があります。まず、サポート期間が限定されており、Office LTSC 2021のサポート期間は2026年10月までとなっています。また、新機能の追加はなく、セキュリティ更新プログラムとバグ修正のみが提供されます。
さらに、クラウドサービス(Teams、OneDrive、SharePointなど)は含まれていないため、これらのサービスが必要な場合は別途契約する必要があります。
法人契約におけるライセンス管理のポイント
法人でOfficeライセンスを導入する際、適切な管理体制を構築することが重要です。特に複数のライセンスを管理する場合、煩雑になりがちなライセンス管理をいかに効率化するかがポイントとなります。
ユーザー管理と割り当て
Microsoft 365のサブスクリプションライセンスでは、管理者ポータルからユーザーごとにライセンスを割り当てることができます。人事異動や退職があった場合も、ポータル上で簡単にライセンスの割り当て変更が可能です。
一方、永続ライセンスの場合は、ライセンスキーを管理するための社内システムやスプレッドシートなどを活用して、どの端末にどのライセンスが割り当てられているかを記録しておく必要があります。
コンプライアンスとライセンス監査
法人利用では、ライセンスコンプライアンスの維持も重要な課題です。ライセンス数を超えた不正利用は法的リスクを伴います。
Microsoft 365では、管理者ポータルから利用状況を確認できるため、ライセンスの過不足を把握しやすいというメリットがあります。定期的に利用状況を確認し、未使用のライセンスがあれば再割り当てや契約見直しを検討するとよいでしょう。
永続ライセンスの場合は、社内で定期的なライセンス監査を実施し、インストール状況と保有ライセンス数の整合性を確認することをおすすめします。
どのような企業でも起こりがちなのが、退職者のアカウント管理の問題です。退職者のアカウントを適切に無効化し、ライセンスを回収する仕組みを人事部門と連携して構築しておくことが重要です。
コスト最適化のための契約戦略
法人向けOfficeライセンスのコストを最適化するためには、自社の利用状況に合わせた契約戦略が欠かせません。
混在環境の構築
すべての従業員に同じプランを適用するのではなく、業務内容に応じて異なるプランを組み合わせることで、コストを抑えることができます。
例えば、Officeアプリを頻繁に使用するデスク業務の社員にはMicrosoft 365 Business Standardを、メールやチャットが中心の現場社員にはMicrosoft 365 Business Basicを割り当てるといった方法です。
また、一部の部署では永続ライセンスを、クラウドサービスを多用する部署ではサブスクリプションを、といった混在環境も検討の余地があります。
ボリュームライセンスの活用
一定数以上のライセンスを契約する場合、ボリュームライセンスを活用することでコスト削減が可能です。Microsoft 365では、CSP(Cloud Solution Provider)プログラムを通じて、パートナー企業経由でのライセンス契約が可能です。
CSPプログラムでは、ライセンス数に応じた割引や、月単位での増減が可能なため、柔軟な契約管理ができます。特に成長中の企業や季節によって人員が変動する企業には適しています。
長期契約のメリット
Microsoft 365では、月額払いと年額払いの選択が可能です。年額払いを選択すると、月額払いに比べて約16%程度割引されるため、安定した人員規模の企業では年額払いが有利です。
さらに、3年契約などの長期コミットメントプランを選択すると、追加の割引が適用される場合もあります。ただし、契約途中での大幅な減少には違約金が発生する可能性があるため、慎重な検討が必要です。
コスト最適化を図る際には、単純な初期費用だけでなく、運用コストやアップグレード費用も含めた総保有コスト(TCO)で比較することが重要です。
法人契約におけるセキュリティとコンプライアンス
法人でOfficeを導入する際、セキュリティとコンプライアンスへの配慮は欠かせません。特に顧客データを扱う企業や、規制の厳しい業界では重要な検討ポイントとなります。
Microsoft 365のセキュリティ機能
Microsoft 365、特にBusiness PremiumやEnterpriseプランには、多層防御のセキュリティ機能が組み込まれています。
- 多要素認証:パスワードに加え、スマートフォンなどの第二の認証要素を要求
- 条件付きアクセス:ユーザーの場所やデバイスの状態に基づいてアクセスを制御
- データ損失防止(DLP):機密情報の外部流出を防止
- 高度な脅威保護:フィッシングやマルウェアからの保護
これらの機能は、Business PremiumやE3、E5プランで利用可能ですが、BasicやStandardプランでは一部制限があります。セキュリティ要件が高い企業では、上位プランの選択を検討すべきでしょう。
コンプライアンスとデータガバナンス
法人データの管理においては、各種法令や規制への対応も重要です。Microsoft 365 E3/E5プランには、以下のようなコンプライアンス機能が含まれています。
- 情報保護:機密情報の分類とラベル付け
- 電子情報開示:訴訟や監査のためのデータ検索・保持
- 監査ログ:ユーザー活動の記録と分析
- データ保持ポリシー:法的要件に基づくデータ保持期間の設定
特に金融機関や医療機関、上場企業など、厳格なコンプライアンス要件がある組織では、これらの機能が不可欠です。
永続ライセンスのOffice LTSCでは、これらのクラウドベースのセキュリティ・コンプライアンス機能は含まれていないため、別途セキュリティソリューションを導入する必要があります。
Office 365からの移行・アップグレード計画
すでにOffice製品を導入している企業が、新しいライセンス体系に移行する場合の計画について解説します。
既存環境からの移行ステップ
既存の永続ライセンスからMicrosoft 365への移行や、古いバージョンのOffice 365からのアップグレードを行う場合、以下のステップを踏むことをおすすめします。
- 現状分析:現在のライセンス状況、利用アプリ、ユーザー数を把握
- 要件定義:必要な機能、セキュリティレベル、予算を明確化
- プラン選定:要件に合ったプランを選択
- パイロット導入:一部のユーザーで試験的に導入し、問題点を洗い出す
- 移行計画策定:段階的な移行スケジュールを作成
- ユーザートレーニング:新機能や変更点についての教育を実施
- 本番移行:計画に基づいて全社展開
- 運用体制構築:継続的な管理・監視体制の確立
特に大規模な組織では、部門ごとに段階的に移行することで、リスクを分散させることができます。
ライセンス移行時の注意点
ライセンス移行時には、以下の点に注意が必要です。
- データの継続性:メールデータやOneDriveのファイルが引き継がれるか確認
- 互換性の問題:古いバージョンで作成したファイルの互換性を検証
- カスタマイズ設定:テンプレートやマクロなどのカスタマイズ要素の移行
- アドインの対応:使用中のアドインが新環境でも動作するか確認
また、移行期間中は旧環境と新環境が並行して稼働することになるため、ユーザーの混乱を最小限に抑えるための明確なコミュニケーションが重要です。
まとめ:自社に最適なOfficeライセンス選びのポイント
法人向けOffice 365ライセンス契約について、主要なポイントを解説してきました。最後に、自社に最適なライセンスを選ぶためのチェックポイントをまとめます。
- 利用人数と成長予測:現在のユーザー数と今後の増減予測
- 業務内容とアプリ利用頻度:必要なアプリケーションと使用頻度
- モバイル利用の必要性:外出先や複数デバイスでの利用ニーズ
- クラウドサービスの活用度:Teams、SharePoint、OneDriveなどの利用予定
- セキュリティ要件:業界特有のセキュリティ・コンプライアンス要件
- 予算と投資計画:初期投資とランニングコストのバランス
- IT管理リソース:社内のIT管理体制と運用負荷の許容度
これらの要素を総合的に検討し、自社の状況に最適なライセンスプランを選択することが重要です。
2025年現在、多くの企業にとってはMicrosoft 365のサブスクリプションモデルが柔軟性や機能面で優位性がありますが、特定の環境や要件によっては永続ライセンスが適している場合もあります。
また、すべての従業員に同一プランを適用するのではなく、業務内容に応じて異なるプランを組み合わせることで、コスト最適化を図ることも検討すべきでしょう。
法人向けOfficeライセンスの選択は、単なるコスト比較ではなく、業務効率化やセキュリティ強化、将来の拡張性も含めた戦略的な意思決定です。本記事が皆様のライセンス選定の一助となれば幸いです。
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